【歯を残す・エクストリュージョン】右下の歯を抜歯と言われた方の治療

こんにちは。

東京都立川市の歯科医院「Inoue Dental Clinic」歯科医師の井上貴史です。

今回は右下の歯を抜歯と言われた方の治療でエクストリュージョンについての内容です。

患者さんは右下の歯冠部(歯の頭の部分)がなくなり歯根のみになり、歯医者さんに抜歯するしかないと言われたそうです。

当歯科医院でなるべく歯を抜かない治療があればと思い来院されました。

痛みなどの症状などはないそうです。
 

■手術用顕微鏡(マイクロスコープ)を使用して口腔内を確認



原因の歯を手術用顕微鏡(マイクロスコープ)を使用して確認していきます。
 


右下の前歯から5番目の第二小臼歯です。

歯冠部がなくなり歯肉が歯に覆うように被さっています。

歯も変色してむし歯(虫歯)にもなっています。

手術用顕微鏡(マイクロスコープ)の倍率を上げて確認します。
 


歯質を器具で確認するとバイオフィルム(デンタルプラーク)などがあり、歯質も軟化象牙質といってむし歯になり柔らかくなっていました。

このような状態ですとやはり歯を保存することは難しいと思われます。

患者さんに現在の状態を説明し、抜歯をしないで保存する治療について提案させて頂きました。

 

■エクストリュージョン(挺出)とは
 

エクストリュージョン(挺出)とは、歯肉の下までむし歯(虫歯)が進行した場合や歯が割れてしまっている場合などに行います。

矯正的に歯を引っ張り上げて歯肉の上まで歯を引っ張ります。

エクストリュージョンについて→【歯を残す】左上前歯の被せ物が脱離(エクストリュージョン編)


この治療は保険適応外になります。


患者さんにエクストリュージョン(挺出)の説明をし同意を得て治療を行うことになりました。

■実際の治療

 


それでは実際の治療になります。

まずは、前後の歯を中心にクリーニングを行います。

エクストリュージョンを行う右下第二小臼歯のむし歯を除去します。

むし歯を除去すると健全な歯質はほとんど歯肉の下にあります。

この状態では被せ物ができません。

 


前後の歯にワイヤーを装着します。

エクストリュージョンをしたい歯にはフックをつけて矯正用のゴムをかけます。

 


咬合面からの画像です。

次回の来院は3週間後になります。

ゴムで弱い力を継続的にかけることで歯が動いてきます。

治療中に器具が外れたらすぐに連絡をして再度装置を装着します。

そのままにしているとせっかく動いてきた歯が元に戻ってしまうことがあります。

■エクストリュージョンの経過


約3週間後です。

順調に歯が動いてきました。

歯が動くと同時に歯肉などの歯周組織も上がってきます。

歯肉も整えます(歯冠長延長術)。


歯冠長延長術について→【歯を残す】左上前歯の被せ物が脱離(歯冠長延長術編)

 


こちらが歯冠長延長術直後です。
 


横からの画像です。

歯が歯肉より上に出てきました。
 


エクストリュージョン開始時との比較です。

ゴムの長さも短くなりフックもワイヤーに近づいてきました。

順調に進んでよったっかです。

患者さんも抜かない治療ができて喜んでくれています。

今回はここまでです。

この後は歯肉の状態を確認してセラミックの被せ物の治療になります。

健全な歯根の長さなど適応がありますのですべての方にできる治療ではありません。

担当の歯科医師にご相談頂ければと思います。

治療回数:4回(約1ヶ月半)
費用:エクストリュージョン:55,000円
   歯冠長延長術:16,500円
リスク・副作用:腫脹、疼痛、歯肉の違和感、歯質が少ないことにより歯根破折など
すべての歯が適応ではありません。
詳しくは担当歯科医師にご相談下さい。

なるべく歯を保存できるよに精進していきます。

今後ともよろしくお願いします。

井上貴史