こんにちは。
東京都立川市の歯科医院「Inoue Dental Clinic」院長の井上貴史です。
今回は、「他院で抜歯の可能性が高いと診断された」とご相談に来られた患者さんの症例をご紹介します。
対象となったのは、左上の第一小臼歯(前から4番目の歯)です。
詰め物が取れたことをきっかけに歯が大きく欠け、受診された歯科医院で「歯を残すことが難しく、抜歯になる可能性が高い」と説明を受けたため、当院へご相談にいらっしゃいました。
初診時の精密検査と診査・診断
当院では、歯を残せる可能性や治療方法を検討するため、初診時に十分な時間を確保した自由診療の精密検査(22,000円・税込)を行っています。
お悩みを詳しく伺ったうえで、マイクロスコープ(歯科用手術用顕微鏡)による拡大視診や、歯科用CTによる画像診断などを行い、歯の状態を多角的に確認します。
【初診時の状態】
来院時は左上の歯に白い仮蓋がされており、周囲の歯肉には赤みと炎症が認められました。
また、歯科用CTでは、歯の根の先端(根尖部)に病変が疑われる像が確認されました。
歯の頭の部分(歯冠部)は大きく失われていましたが、精査の結果、複数の処置を組み合わせることで、歯を保存できる可能性があると判断しました。
今回の治療では、以下のステップを計画しました。
● マイクロスコープを使用した根管治療(根管内の感染源を可能な限り除去)
● 歯肉の環境改善と根管治療のための前処置
● 炭酸ガスレーザーによる歯肉形態の調整
● 隔壁形成・ラバーダム防湿
● エクストルージョン(歯根挺出術)
● 土台(コア)の築造
● 最終的な被せ物(クラウン)
患者さんには、それぞれの治療の目的、期間、費用、リスクについてご説明し、十分にご理解・ご同意いただいたうえで治療を開始しました。
実際の治療プロセス|精密根管治療のための前処置
根管治療では、治療中に唾液や細菌が根管内へ入り込まないよう、できる限り清潔な処置環境を整えることが重要です。
しかし今回の歯は、歯冠部が大きく失われ、さらに歯肉が欠損部を覆うように入り込んでいたため、そのままではラバーダム防湿を行うことが困難な状態でした。
そこで、根管治療を行う前に、治療しやすい環境を整えるための前処置を行いました。
※ここから治療中の写真を掲載します。苦手な方はご注意ください。
1.マイクロスコープ下での仮蓋除去
周囲の歯肉には炎症があり、刺激によって出血しやすい状態でした。
そこで、マイクロスコープで拡大した視野を確認しながら、周囲の組織をできるだけ傷つけないよう慎重に仮蓋を除去しました。
2.歯肉の状態を確認
仮蓋を外すと、歯冠部はほとんど残っておらず、歯肉が歯の欠損部を覆うように入り込んでいる状態が確認できました。
また、歯肉には炎症があり、わずかな刺激でも出血しやすい状態でした。
このままでは、ラバーダム防湿を行い、根管治療に適した環境を作ることが難しいと判断しました。
3.炭酸ガスレーザーによる歯肉形態の調整
そこで、炭酸ガスレーザーを用いて、歯肉の形態を調整しました。
レーザーを用いることで、今回のような処置部位の出血を抑えながら、治療に必要な歯の輪郭を確認しやすい状態に整えることを目指しました。
処置後には、覆いかぶさっていた歯肉が整理され、歯の輪郭を確認しやすくなりました。
歯肉を整えました。
左が術前です。
歯の覆い被さっていた歯肉がなくなり、歯が見えてきました。
4.隔壁の作製とラバーダム防湿
歯の周囲にレジン(樹脂)を用いて人工的な壁(隔壁)を作り、ラバーダム防湿を行いました。
ラバーダムによって治療する歯を周囲から隔離し、唾液などが治療部位に入り込むことをできるだけ防ぎます。
処置環境を整えたうえで、マイクロスコープ下で根管内部を確認しながら、根管内の感染物質を可能な限り除去する根管治療を行いました。
次のステップ|エクストルージョン装置の装着
根管治療が完了した後、次の工程としてエクストルージョン(歯根挺出術)の装置を装着しました。
残っている歯根にフックを取り付け、両隣の歯に渡したワイヤーを固定源として、ゴムの牽引力を利用し、歯肉の下に埋まっている歯質を少しずつ上方へ移動させます。
歯肉より上に健全な歯質を確保することで、最終的な被せ物を安定させるために必要な歯質(フェルール)を得ることを目指します。
このように、歯を残すことが難しいと考えられるケースでも、根管治療だけでなく、歯周組織や補綴、矯正的な処置などを組み合わせて治療方法を検討する場合があります。
症例の治療詳細(自由診療)
本症例は自由診療による治療です。
症例の治療詳細
治療内容:マイクロスコープおよびラバーダム防湿を用いた根管治療(自由診療)、エクストリュージョン
来院回数・期間:4回(約2ヶ月)費用:
初診精密検査:22,000円(税込)
根管治療:138,600円(税込)
エクストリュージョン:77,000円(税込)
主なリスク・副作用
● 治療中・治療後に、一時的な痛み、腫れ、歯肉の違和感などが生じる場合があります。
● 歯根破折や微小な亀裂、重度の歯周病などが認められる場合、歯を保存できないことがあります。
● 根管の形態や石灰化の程度などにより、治療期間や回数が前後する場合があります。
● レーザー処置後、一時的に歯肉の違和感やつっぱり感などが生じる場合があります。
● エクストルージョンを行っても、すべての歯で長期的な保存が可能になることを保証するものではありません。
※治療方針や治療の適応については、患者さんごとに歯の状態、歯周組織、咬合などを診査・診断したうえで慎重に決定します。
「抜歯しかない」と言われたけれど、できるだけ歯を残したい方へ
「他院で抜歯の可能性が高いと言われた」
「できることなら自分の歯を残したい」
「マイクロスコープを使用した根管治療について相談したい」
このようなお悩みがある場合でも、歯の状態によっては、根管治療だけでなく、歯周組織への処置やエクストルージョン、補綴治療などを組み合わせることで、歯を保存できる可能性を検討できる場合があります。
もちろん、すべての歯を保存できるわけではありません。大切なのは、まず現在の歯の状態を詳しく確認し、保存できる可能性があるのか、抜歯が適切なのかを含めて治療方法を検討することです。
立川市・立川近郊で「他院で抜歯の可能性が高いと言われたが、できる限り自分の歯を残したい」「マイクロスコープを用いた根管治療について相談したい」という方は、一度ご相談ください。
Inoue Dental Clinic
院長:井上 貴史







