こんにちは。東京都立川市の歯科医院「Inoue Dental Clinic」歯科医師の井上貴史です。
今回は、「左上の奥歯(第二大臼歯)の歯ぐきが腫れて痛む」という主訴で来院された患者さんの精密根管治療(歯の根の治療)の症例をご紹介します。
1. ご来院時の症状と精密検査(マイクロスコープ・CT)
患者さんは「左上の奥歯の歯ぐきが腫れて痛む」とのことで来院されました。 まずは肉眼では見えにくい細部まで正確に把握するため、手術用顕微鏡(マイクロスコープ)を用いて口腔内を詳しく確認します。
左上の奥から2番目(第二大臼歯/7番)と3番目(第一大臼歯/6番)の口蓋側の歯ぐきに、赤く強い腫れ(発赤・腫脹)が認められました。
マイクロスコープの倍率を拡大し、デンタルミラーの角度を変えながら立体的に観察します。
拡大視野で見ると、歯ぐきが局所的に大きく腫れ上がっていることが明確に分かります。
さらに歯科用CT撮影を行ったところ、口蓋根の根尖(歯の根の先端)に骨が溶けているような黒い影(根尖病巣)が確認されました。 奥歯の複雑な根の形や骨の吸収状態は、従来の2次元レントゲンだけでは正確な診断が難しいため、3次元で多角的に確認できるCT検査が不可欠です。
検査結果をもとに、歯の神経があった管を無菌化する「根管治療」の必要性・再発リスクを抑える精密治療の重要性を丁寧にご説明し、ご同意をいただいて治療をスタートしました。
2. 精密根管治療の流れ
当院の精密根管治療では、治療の成功率を高め、再感染を防ぐために厳格な処置プロトコルを徹底しています。① 痛みに配慮した麻酔と「ラバーダム防湿」
まずは痛みを抑えるため局所麻酔を行います。 その後、根管治療において極めて重要なラバーダム防湿(ゴム製の保護シート)を装着します。
今回は治療対象が一番奥の第二大臼歯(7番)であったため、親知らず(8番)にクランプ(固定器具)を設置しました。
【ラバーダム防湿を行う重要性】
細菌感染の完全ブロック: 唾液中に無数に存在する細菌が、治療中の根の中に侵入するのを防ぎます(再発予防)。
安全性と清潔な術野: 金属片や削りカス、薬剤がお口の中に落ちたり誤飲したりするのを防ぎます。
② 金属の修復物の除去・二次むし歯の確認
古い金属の詰め物(銀歯)を除去していきます。
金属を削る際には目に見えない微小な粉塵が飛び散りますが、ラバーダムを装着しているため口腔内への飛散や誤飲を防ぐことができます。
金属を外すと、内部に茶色く変色した「むし歯(二次カリエス)」が広がっていました。
銀歯の隙間から長年かけてむし歯菌が侵入し、歯の神経・根の先まで感染を広げて根尖病巣を引き起こした可能性が高いと考えられます。
③ 隔壁(かくへき)作成と精密根管内清掃
感染したむし歯を徹底的に取り除いた後、歯の周囲にレジンで壁を作る「隔壁(かくへき)」を形成します。これにより、薬液漏れを防ぎ、ラバーダムの密閉性をさらに高めることができます。
その後、マイクロスコープで根管内を強拡大しながら、感染物質を専用器具と薬液で徹底的に洗浄・消毒していきます。
その後、マイクロスコープで根管内を強拡大しながら、感染物質を専用器具と薬液で徹底的に洗浄・消毒していきます。
3. 治療経過とBefore / After
治療開始から約2週間後の経過観察時の状態です。
赤く大きく腫れ上がっていた歯ぐきの腫脹・発赤は消失傾向、引き締まった健康的な歯肉へと改善しました。 患者さんからも「痛みや腫れが引き、食事が快適にできるようになった」とお喜びの声をいただきました。
4. 複雑な根管治療で歯を残すために
今回の根管治療の症例は、肉眼や感覚だけの治療では感染部位の見落としや再発が非常に起こりやすい部位です。
今回も「歯科用CT」による立体的な解剖学的把握と、「マイクロスコープ(手術用顕微鏡)」による強拡大下での視野、そして「ラバーダム防湿」による環境が揃っていなければ、歯を残すことは極めて困難だったと感じています。
今後は、再感染を防ぎ歯の寿命を最大限に延ばすため、適合精度の高い自費診療の被せ物(クラウン)の作製へと進んでいきます。
当院では、エビデンス(科学的根拠)のある材料・器具を使用し、大切な歯を1本でも多く残せるよう精密根管治療に取り組んでおります。「他院で抜歯と言われた」「奥歯の腫れや痛みが何度も再発する」という方も、諦めずにぜひ一度ご相談ください。
■治療内容・費用・主なリスク
根管治療来院回数:3回(約2ヶ月)費用:
根管治療207,900円
主なリスク・副作用:
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治療中・治療後に一時的な腫れ、痛み、歯ぐきの違和感を生じる場合があります。
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歯根の破折や微小な亀裂、重度の歯周病が併発している場合など、すべての歯で保存・治癒をお約束できるわけではありません。
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根管の形態や石灰化の程度などにより、治療期間が前後することがあります。
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※症状や適応については、診査・診断のうえ詳しくご説明いたします。
今後ともよろしくお願いします。
井上貴史









